外科医のレベルは下がっている

 麻酔科ができる前から外科をやっていた外科医がいなくなり、腹腔鏡だ胸腔鏡だと新しい機械が出てきて、先輩の外科医の技術を評価することもなく、謙譲の美徳も知らず、経験の裏打ちされていないチャンピオンデータの論文を盲信する、都合が悪くなればエビデンスと言って、自施設のデータではなく一般的なデータを出す。そんな外科医が増えてきた。チーム医療だとかなんとか言いながら、自分たちのわがままを通す方便にしかしない。

 慣れた手技であればうまくできるが、新しい手技については基本的に身に着けた技術の延長として少し手間取る程度で対応できるならば、それはいい外科医なのだろうが、凡百の外科医は、基本手技が身についていないために、少しどころか倍以上の時間をかけて、患者の状態を悪化させる。それでも、自施設のデータで患者を説得するならば、患者の自己責任だろうが、成功率や失敗についての説明が自分のデータではない中小規模の病院の若めの部長や医長の説明で承諾する患者は、犠牲者であろう。

 胸腔鏡補助での食道切断も、腹臥位での片肺虚脱が生理的に綱渡りな麻酔管理なのに、声を挙げない無責任な麻酔科医と、手術のしやすさを患者の安全性よりも優先する外科医の共犯によって成り立っている手技であり、誠実さとはかけ離れているとしか思えない。確かに慣れた術者であれば、問題なくいい成績を出すだろうが、年に1回あるかないかの施設でやるべき手技ではないし、成績のいい施設に集約することが患者や医療経済的にはいいことだ。身の程をわきまえた平凡な外科医であることをよしとせず、自分の技量を超えた手技を自己満足のために、患者をだまくらかしてやらせてもらう外科医が外科学会から淘汰されることはありそうもないのは、施設基準に厳格さがないからだ。

 甲状腺摘出や甲状腺がんの手術、スリーブロベクトミー、食道全摘、膵頭十二指腸切除、門脈操作を伴う肝臓切除などは、年間症例数がそれぞれ週1例以上の施設でやってもらうべきであり、術後管理などを含めたチーム医療がうまく行っている施設でやるべき手術。胆嚢摘出、虫垂切除、潰瘍穿孔手術、腹膜炎手術、腸穿孔手術など緊急性があり、大切な手術をコツコツやる外科医の方が、一人の医師として生涯救う人数は多い。たまにしかしない手術をした後の管理を部下に丸投げするような術者には、年に1回あるかないかの大手術をさせてはいけない。

 

学校について考える

 息子が中学受験して、希望のコースになれなかった。その事自体は実力相応ならばそれでもいい。問題は、その学校の言行不一致にある。学校説明会では、総合点で8割以上ならばという説明。その学校主催の模擬試験でも、点数と点数分布を教えてくれる学校である。ところが、入学試験では点数は非公開。入学後のクラス編成試験でも8割という事前の基準があるが、これも非公開。学校説明会の内容と、受験までの流れからは、理解に苦しむ。この学校がこれから実績を積み上げたいならば、点数や得点分布を公表して子供に具体的な目標を設定させて、やる気を引き出すべきだろう。学校説明会では解き直しや努力の話を散々していたのに、入学試験や直後の試験でのこの姿勢には違和感しかない。

 もし、この学校の内部進学生への配慮をしているのならば、入学後の試験ではどんな結果になるだろうか?最初の試験で下剋上という状況になった場合には、やる気のある生徒のやる気を潰し、親の学校への信頼を失うことになるのだが。別に、優秀な生徒が増えている結果であれば、努力するいい目標になるからいいのだが、説明会での微妙な内部進学生の反応からは、内部進学生に有利なクラス編成テストであったことは伺い知れる。

 小学生の時に算数で解くことの大切さを知らずに、代数で解くことを教える学校は、子供の力を引き出したり、あるいは将来的な学力の伸びの芽を摘んでいる。英語を早めに学習させることと、数学の基礎となる考え方を育てることを抜きにして手順だけを覚えさせる算数教育では意味が違うことをわかっていない。大木を促成栽培で育てることができるわけもないのに、手をかける時と場所を間違っているとしか思えない。学力ということに対して、今の受験制度の中では決して勝ち組ではなかった教員たちが、真摯に学問を子供に与えるという意識を持っているとも思えない。教育は国の大事であるが、有能な人間で学校の教師になる人は少ない。親が我が子の力を伸ばす意図を明確にもって子供に接しない限りは、子供の才能を伸ばすことはできないだろう。

 何よりも、親からの質問を躱し、ごまかす姿勢が入学試験直後より顕わになる学校であることが腹立たしい。